待ち時間の目安の出し方|計算の手順と、外れたときの伝え方

「あと何分くらいですか」と聞かれて、なんとなく「30 分くらいです」と答えたら、1 時間待たせてしまった。待ち時間の目安は、外れるとそのままクレームの種になります。
この記事は、順番待ちができる飲食店の店主・店長に向けて、待ち時間の目安の出し方と、外れたときの伝え方 をまとめました。結論からいうと、目安は 「直近の案内のペース × 前で待っている組数」 で計算し、席の種類ごとに分けて出します。そのうえで、目安は前後するものとして掲示し、延びそうなときは聞かれる前に伝え直します。
待ち時間の目安がずれる 4 つの理由
目安を伝えること自体は、お客様の不満を減らします。株式会社DFA Robotics が週に 3 回以上外食する 20〜50 代の 109 名に聞いた 2024 年 7 月の調査では、飲食店の待ち時間でストレスを感じる場面の 1 番目が「待ち時間がわからないまま待たされる」(60.6%)、ストレスを感じにくくなる対応の 1 番目が「店員から待ち時間があとどれくらいか具体的に伝えてもらう」(45.9%)でした(株式会社DFA Robotics「飲食店の待ち時間に関する意識調査」(PR TIMES))。
ただし、待ち時間の目安はあくまで計算した予想です。外れる理由を知っておくと、計算の仕方と伝え方の両方で手を打てます。
- 席の種類と人数が合わない:カウンターは次々に空いても、4 名以上のテーブルは空きにくい。全体で 1 つの目安を出すと、大人数の組ほど長く待つ
- お客様の食事の時間がばらつく:同じ 2 名でも、ランチで 30 分の組もあれば、話し込んで 1 時間の組もある
- 待っている組が抜ける:受付をしたまま戻らない組、呼んでも来ない組がいると、後ろの組は目安より早く呼ばれる
- 時間帯で案内のペースが変わる:ピークの始まりは席が埋まったばかりで、しばらく誰も帰らない。ピークの終わりは一斉に空く
お客様から見ると、目安より早く呼ばれるのは「店の前を離れていたら順番を飛ばされた」、遅いのは「言われた時間を過ぎても呼ばれない」という不満になります。目安は ずれる前提で、ずれ幅を小さくし、ずれたら早めに伝える ものと考えます。
目安の出し方:直近の案内ペース × 待ち組数
目安の計算に、特別な道具は要りません。受付表に「受付」と「案内」の時刻が書いてあれば、次の 3 つの手順で出せます。

- 直近 60 分に案内した組数を数える:受付表の「案内」の時刻を見て、今から 60 分前までに何組を席に案内したかを数える
- 1 組あたりの案内の間隔を出す:60 ÷ 案内した組数。6 組なら 10 分に 1 組のペースで席が空いている
- 目安を出す:前で待っている組数 × 案内の間隔。前に 4 組なら 4 × 10 = 約 40 分
端数は 5 分単位で切り上げます(計算が 32 分なら「約 35 分」)。少し長めの目安で呼ばれると、お客様は「思ったより早かった」と感じます。ただし、大きく長めに言うと、待てたはずのお客様が帰ってしまいます。切り上げは 5 分単位までにします。
「直近 60 分」にするのは、時間帯で変わる案内のペースを目安に反映させるためです。開店直後でまだ 60 分たっていないときは、前の週の同じ曜日・同じ時間帯のペースを使います。
この計算は、行列の待ち時間を「待っている数 ÷ 処理のペース」で求める考え方(待ち行列の理論でリトルの法則と呼ばれる関係。東洋経済オンライン「実戦!地頭力(中) 行列の待ち時間を計算するには」)を、店の受付表で使える形にしたものです。席の種類や人数で案内の順番が入れ替わる飲食店では、全体の 1 つの計算だけでは合わないため、次のように分けて使います。
席の種類ごとに分けて計算する
カウンターとテーブル、2 名席と 4 名席のように、空くペースが違う席がある店は、目安を席の種類ごとに分けて出します。分け方は、店の席の数に合わせて 2〜3 種類で十分です。

上の例では、全体でまとめて計算すると目安は約 35 分ですが、5 名以上の組は実際には約 60 分待つことになります。受付で人数を聞いたら、その人数に合う席の目安を伝えます。「カウンターでもよろしければ約 30 分、テーブルですと約 60 分です」のように、選んでもらう伝え方もできます。
目安を出すときに受付表に書くこと
計算に使う時刻を、ピークの時間だけでも受付表に書き足します。
番号 | 人数 | 席の希望 | 受付 | 案内 | 伝えた目安 |
|---|---|---|---|---|---|
21 | 2 名 | どちらでも | 12:10 | 12:38 | 約 30 分 |
22 | 4 名 | テーブル | 12:12 | 12:55 | 約 30 分 |
23 | 1 名 | カウンター | 12:15 | 12:33 | 約 20 分 |
「案内」の時刻は目安の計算に、「伝えた目安」は後で目安を直すのに使います。上の例では、4 名の 22 番は約 30 分と伝えて 43 分待っています。テーブルの目安を分けて出していれば防げたずれです。
目安の見せ方:掲示・受付・呼び出しの 3 か所で伝える
計算した目安は、お客様が「あと何分か」を知りたくなる場面で伝えます。主な場面は 3 つです。
場面 | 伝え方 | 添えること |
|---|---|---|
入口・待合(受付の前) | 待ち組数と目安を掲示する | 更新した時刻、前後することがある旨 |
受付のとき | 人数と席の希望を聞いてから、口頭で目安を伝える | 席の種類で目安が違うこと、呼び出しの方法 |
待っている間 | 状況が変わったら伝え直す(「あと 2 組です」) | 遅れている理由、順番は受付の順のままであること |
入口の掲示には、更新した時刻 も入れます。いつの目安か分からない掲示は、古いまま残っているとお客様の不信につながります。掲示の見本を用意しました。数字と時刻を書き換えて使ってください。

コピーして使えるように、文面も載せておきます。
ただいまの待ち時間の目安 約 ◯◯ 分
お席の空き具合で前後することがあります。4 名様以上のお席は、目安より長くなることがあります。
◯◯:◯◯ 更新
受付で口頭で伝えるときは、目安・前後すること・呼び出しの方法をまとめて伝えます。
- 「ただいま 4 組お待ちで、目安は 40 分ほどです。お席の空き具合で前後しますので、番号でお呼びするまでお近くでお待ちください」
- 「4 名様ですと、テーブル席の空きを待つので 60 分ほどになりそうです。カウンターに分かれてよろしければ、30 分ほどでご案内できます」
待っている間に案内の状況を伝えたり、待ち時間を楽しんでもらったりする工夫は、待ち時間を楽しませる工夫で紹介しています。
目安より延びたときの伝え方と文例
目安を過ぎても呼ばれないとき、お客様は「忘れられているのでは」「抜かされたのでは」と不安になります。先に紹介した DFA Robotics の調査でも、「待っている間に他の客が先に案内される」は 43.1% で、ストレスを感じる場面の 2 番目でした。延びそうだと分かった時点で、聞かれる前に 伝えるのが基本です。
伝えることは次の 3 つです。
- 遅れている理由:「お食事中のお客様が多く」「大人数のお席が空かず」
- 新しい目安:「あと 20 分ほど」
- 順番の扱い:「順番は受付の順のままです」
場面ごとの声かけの例です。
場面 | 声かけの例 |
|---|---|
目安を過ぎそうなとき | 「お待たせしております。お食事中のお客様が多く、ご案内があと 20 分ほど遅れそうです。順番は受付の順のままですので、もう少々お待ちください」 |
後から来た組が先に案内されたとき | 「お先にご案内したのはカウンター席のお客様です。テーブル席は今お食事中のお客様が多く、あと 15 分ほどでご案内できる見込みです」 |
目安を大きく過ぎたとき | 「目安をお伝えしていたのに、大変お待たせして申し訳ありません。次に空くテーブルでご案内します。お急ぎでしたら、カウンターでもすぐにご用意できます」 |
声をかけたら、入口の掲示も新しい目安に書き換えます(上の見本の右)。延びた理由と新しい目安を掲示しておけば、後から来たお客様には最初から正しい目安を伝えられます。
順番が前後したときの説明や、待ち時間のクレームへの対応は、待ち時間のクレーム対応で場面別に紹介しています。
記録して目安を直す
目安の精度は、記録を続けるほど上がります。1 週間に 1 回、受付表の「伝えた目安」と、実際に待った時間(案内 − 受付)を比べます。
- 実際の方が長い組が多い → 席の種類を分けて計算する。大人数の組の目安を別に出す
- 実際の方が短い組が多い → 戻らない組・呼んでも来ない組が多い。呼び出しのルール(「お呼びして 5 分お越しがない場合は次の方を先にご案内します」など)を掲示する
- 特定の時間帯だけずれる → その時間帯は前の週の同じ時間帯のペースを使う
ずれの原因が「片付けが遅く、席が空いているのに呼べない」ことなら、目安の計算ではなく、待ち時間そのものを短くする段取りの問題です。工程ごとの短縮策は飲食店の待ち時間を短縮する方法にまとめています。行列の対策全体は飲食店の行列対策ガイドをご覧ください。
目安の計算と表示を仕組みにするなら
ピークの時間に、受付をしながら案内の組数を数えて掲示を書き換えるのは、手間がかかります。目安の計算と表示は、順番待ちの仕組みに任せることもできます。

アソベルは、店頭のタブレットでお客様が自分で受付し、整理券を受け取れる順番待ちシステムです。その日の案内のペースから計算した待ち時間の目安を、受付画面や店内の大型ディスプレイに表示できます。お客様は整理券の QR コードから、あと何組か・待ち時間の目安をスマホで確かめられるので、店の前を離れて待つこともできます。
スタンダードプランでは、日別・時間帯別の受付数や待ち時間をグラフで確かめられる分析の機能も使え、目安を直すための記録になります。機能の詳細はアソベル「機能紹介」、プランごとの機能と料金は「料金プラン」をご覧ください。待っている間に遊べる待ち時間対策のゲームも用意しています。
参考資料
まとめ
- 待ち時間の目安は、席の種類と人数・食事の時間のばらつき・抜ける組・時間帯のペースの変化でずれる
- 目安は「直近 60 分の案内ペース(60 ÷ 案内した組数)× 前で待っている組数」で出し、5 分単位で切り上げる
- 空くペースが違う席がある店は、席の種類ごとに目安を分けて伝える
- 掲示には更新した時刻と「前後することがある」旨を入れ、延びそうなときは理由・新しい目安・順番の扱いを聞かれる前に伝える
- 伝えた目安と実際の待ち時間を週 1 回比べ、計算の仕方を直す
アソベルは無料プランから試せます。まずはピークの時間に、受付と待ち時間の目安の表示をタブレットに任せてみてください。
よくあるご質問
Q飲食店の待ち時間の目安は、どう計算すればよいですか?
直近 60 分に案内した組数を数え、60 をその組数で割って「1 組あたりの案内の間隔」を出します。これに前で待っている組数を掛けたものが目安です。たとえば直近 60 分に 6 組を案内し、前に 4 組が待っていれば、60 ÷ 6 = 10 分、4 組 × 10 分で約 40 分です。
Q待ち時間の目安は、少し長めに伝えた方がよいですか?
端数を 5 分単位で切り上げる程度の長めはおすすめです。ただし、大きく長めに伝えると、待てたはずのお客様が帰ってしまうことがあります。計算した目安を切り上げて伝え、延びそうなときは早めに伝え直す方が、お客様の不満も機会の損失も小さくなります。
Q目安より待たせてしまったときは、どう伝えればよいですか?
目安を過ぎる前に、お客様のほうから聞かれる前に伝えるのが基本です。「お食事中のお客様が多く、ご案内があと 20 分ほど遅れそうです。順番は受付の順のままです」のように、遅れる理由・新しい目安・順番の扱いの 3 つをそろえて伝え、入口の掲示も書き換えます。
この記事を書いた人
在間 理樹合同会社Y.G.Tクリエイト 代表
合同会社Y.G.Tクリエイト代表社員。飲食店向けの順番待ち整理券サービス「アソベル」の運営統括責任者。慶應義塾大学経済学部を卒業後、アビームコンサルティング株式会社で業務アプリケーション開発と業務運用改善プロジェクトのPMOに従事。2024年からゲーム開発を始め、16th Unity Awards、ニコ生自作ゲームフェス敢闘賞を受賞。業務改善とゲーム開発の経験をもとに、待ち時間を楽しめるお店の仕組みづくりに取り組んでいる。



