Column

コラム

待ち時間を楽しませる工夫|飲食店ですぐできるアイデアと声かけ例

公開日 情報更新日 著者 在間 理樹

行列ができるお店にとって、待ち時間をゼロにするのは簡単ではありません。ただ、同じ 20 分でも「長く感じる待ち」と「あっという間の待ち」があります。この記事は、飲食店の店主・店長に向けて、待っているお客様に楽しく過ごしてもらう工夫を紹介します。

結論からいうと、待ち時間の満足度を上げるには 先を見せる・することを渡す・ルールを先に伝える・楽に待てる場所にする の 4 つが基本です。費用のかからない声かけと掲示から始め、手が回らなくなったら仕組みにします。そのまま使える声かけの例と掲示の見本も用意しました。

待ち時間を楽しんでもらう 4 つの工夫。先を見せる、することを渡す、ルールを先に伝える、楽に待てる場所にする

なぜ待ち時間は長く感じるのか

待ち時間の感じ方は、実際の長さだけでは決まりません。よく知られているのが、アメリカ・ヒューストンの空港の手荷物受取所の話です。手荷物の係員を増やして待ち時間を平均 8 分まで縮めても、苦情は減りませんでした。

調べると、到着ゲートから受取所までは歩いて 1 分、残りの 7 分はただ立って荷物を待っていたのです。そこで到着ゲートを遠くに移し、荷物をいちばん遠いターンテーブルに回して歩く時間を 6 倍にしたところ、苦情はほとんどなくなりました(Association for Psychological Science「Why Waiting Is Torture」。New York Times の寄稿の紹介)。

待つ長さは同じでも、何もせずに立っている時間が不満の元だったわけです。サービス経営の研究者デービッド・マイスターは、こうした待ちの感じ方を左右する 8 つの原則をまとめています(David H. Maister「The Psychology of Waiting Lines」)。

待ちが長く感じる 8 つの場面と、お店でできること。何もすることがない→メニューや遊べるものを渡す、いつまでか分からない→残りの組数と目安を出す、など

8 つの原則のうち、飲食店ですぐ手を打てるのは次の 4 つです。

長く感じる待ち

飲食店での例

何もすることがない

店の前で立ったまま、スマホを見るしかない

いつまでか分からない

「少々お待ちください」とだけ言われて、何分か分からない

理由が分からない

空席が見えるのに案内されない

不公平に見える

後から来た組が先に入っていく

どのくらいなら待てるのかも見ておきます。シチズン時計が 2023 年に 20〜50 代の 400 人に聞いた調査では、ランチの空席待ちで「15 分超」待たされるとイライラする人が 41.3% で最も多い答えでした(シチズン時計「ビジネスパーソンの『待ち時間』意識」)。一方で、人気の飲食店に入るためなら「1 時間」までは待つ覚悟がある人が 38.3% で最も多くなっています(同調査「人気飲食店の入店待ち」)。

つまり、お客様は待つこと自体を拒んでいるわけではありません。待ち時間が 15 分を超えそうなら、待っている時間の過ごし方まで考えておくのが目安です。

工夫 1:先を見せる(順番と待ち時間を伝える)

先が見えない待ちは、同じ時間でも長く感じます。最初にやるべきなのは、あと何組・あと何分を伝えることです。

受付のときに目安を伝える

  • 「いま 3 組お待ちで、15 分ほどです」と、組数と分を両方伝える
  • 目安は少し長めに伝える。早く案内できれば、お客様には「思ったより早かった」と感じてもらえる
  • 目安は「待ち組数 × 1 組あたりの平均の滞在時間 ÷ 席数」でおおよそ出せます。計算の例は「飲食店の行列対策ガイド」で紹介しています

待っている間にも状況を伝える

  • 10 分おき、または順番が 1 組進むごとに「あと 2 組です」と声をかける
  • 店頭のホワイトボードに「ただいま 〇 番の方までご案内」と書き、更新する
  • 待ち時間が延びたときは、理由と新しい目安をセットで伝える(「お食事中のお客様が多く、あと 10 分ほどかかりそうです」)

黙って延ばすと、お客様は「忘れられているのでは」と不安になります。待ちのデザインを研究したドナルド・ノーマンも、待つ理由をはっきりさせ、状況をこまめに伝えることを勧めています(MIT Sloan Management Review「Designing Waits That Work」)。延びること自体より、知らされないことが不満の元になります。

工夫 2:待つ間に「すること」を渡す

何もすることがない待ちは、長く感じます。マイスターは、ホテルのエレベーターの前に鏡を置いたところ、実際の待ち時間は変わらないのに、待ち時間への苦情が大きく減った例を紹介しています。身だしなみを整えている間は、待っていると感じにくいからです。

飲食店でも、待っている間に手元ですることがあれば、時間の感じ方は変わります。

待つ間に渡せる「すること」の例。費用ほぼなし(メニューを先に渡す・注文を先に聞く)、少しの準備で(こだわりの写真・SNS や Wi-Fi の案内・塗り絵)、仕組みで(順番をスマホで確認・ゲーム・通知での呼び出し)

メニューを先に渡し、注文を先に聞く

いちばん手軽なのが、待っている間にメニューを選んでもらうことです。マイスターの原則には「サービスが始まる前の待ちは長く感じる」というものがあり、待っているお客様にメニューを渡すのは、着席後の提供も速くなる方法として紹介されています。メニューを渡すと、お客様にとっては「もうお店の時間が始まっている」状態になります。

  • 受付のときにメニューを渡し、「お決まりでしたら、ご案内の前にご注文をうかがいます」と伝える
  • 先に注文を受けられれば、着席してから料理が出るまでの時間も短くなる
  • 外で待つ場合は、ラミネートしたメニューや、写真の多い 1 枚もののメニューを用意する

お店のことを知ってもらう

待つ価値が見えると、人は長く待てます。待ち時間は、お店のこだわりを伝えるちょうどよい時間です。

  • 看板メニューの仕込みや、素材のこだわりを写真つきで紹介する
  • おすすめの食べ方、追加のトッピング、季節のメニューを案内する
  • 店の SNS アカウントを紹介し、待っている間に見てもらう

ここで料理への期待が高まると、注文の迷いも減ります。

スマホで過ごせるものを用意する

多くのお客様は、待っている間にスマホを見ています。それなら、お店に関係のあるものをスマホで楽しんでもらう方法もあります。

  • 店内や待合で Wi-Fi が使えるなら、パスワードを掲示する
  • 整理券や店頭の QR コードから、店のメニューや SNS、遊べるゲームを開けるようにする
  • グループで来たお客様には、一緒に見られるメニューや、交代で遊べるものを渡す

子ども連れには手元でできるものを

子どもは大人よりも待つことが苦手です。子どもが退屈すると、一緒にいる大人も落ち着いて待てません。

  • 塗り絵や間違い探しなど、紙 1 枚でできるものを用意する
  • お子さま向けのメニュー表を先に渡し、選んでもらう
  • 座れる場所を優先して案内する

工夫 3:ルールを先に伝えて、不安と不公平をなくす

待っている間の不安は、待ち時間を長く感じさせます。待っているお客様が抱きやすいのは「呼ばれたのに気づかなかったらどうしよう」「少し離れてもいいのか」「後から来た人が先に入った」といった不安です。

呼び出しの方法と、離れてよいかを伝える

  • 受付のときに「お名前でお呼びします」「番号でお呼びします」と、呼び方を伝える
  • 離れてよいかを先に伝える(「2 組前までにお戻りいただければ、近くでお待ちいただいて大丈夫です」)
  • お手洗いの場所を案内する。お手洗いに行けないことも、待っている間の不安の 1 つです
  • 呼んでもいらっしゃらない場合の扱い(何分待つか、順番を後ろに回すか)を決めて掲示する

順番が前後する理由を先に伝える

人数や席の種類によって、案内の順番が前後することがあります。席の大きさと人数を合わせるのはお店として合理的な運用ですが、説明がないと不公平に見えます。

  • 受付のときに「カウンター席でもよろしいですか」と席の希望を聞く
  • 「お席の都合で、人数によってご案内の順番が前後することがあります」と掲示する
  • 順番が前後したときは、待っている方に「お二人様用のお席が空くまで、少々お待ちください」とひと言添える

掲示の文面は「飲食店の行列対策ガイド」にもまとめています。

工夫 4:楽に待てる場所にする

立ちっぱなしや暑さ・寒さは、待ち時間をつらいものにします。待つ場所の居心地も、待ち時間の体験の一部です。

座れる・暑さ寒さをしのげる

  • 待合や軒下にベンチ・椅子を置く(歩道に出す場合は、道路使用許可などのルールに注意する)
  • 夏は日よけと冷たい水、冬はひざ掛けやカイロを用意する
  • 雨の日は傘立てと、濡れずに待てる位置を決めておく

店の前から離れて待てるようにする

いちばん自由に待てるのは、受付だけ済ませて、店の前から離れて待てる形です。近くで買い物をしたり、車の中で休んだりできれば、待ち時間はお客様自身の時間になります。

  • 携帯電話の番号を聞いて、順番が近づいたら電話で呼ぶ
  • 整理券の番号を渡し、店頭の番号表示やスマホで順番を確かめてもらう
  • 順番待ちシステムを使い、スマホへの通知で呼び出す

子ども連れや年配のお客様、暑さ・寒さの厳しい日は、離れて待てるだけで負担が大きく減ります。

お客様に合わせて配慮する

お客様

配慮の例

子ども連れ

座れる場所を優先して案内する。塗り絵やお子さま向けのメニュー表を渡す

年配のお客様

椅子をすすめる。スマホを使わない方には、名前や番号での呼び出しを残す

外国からのお客様

待ち組数と目安を、数字と簡単な英語で掲示する。順番が前後するルールも英語で伝える

ひとりのお客様

ひとりでも過ごせるよう、メニューや店の紹介を渡す。カウンター席でもよいか先に聞く

外国からのお客様向けには、次のような短い英語の掲示が使えます。

内容

英語の文面

待ち時間

Current wait: about 15 minutes (3 groups ahead)

受付

Please write your name and the number of people here

順番の前後

The order may change depending on group size and available seats

全員そろってから

We will seat you when your whole group is here

そのまま使える声かけと掲示の見本

ここまでの工夫を、店頭でそのまま使える形にまとめました。数字や料理名は、お店に合わせて書き換えてください。

待合に置く掲示の見本 3 枚。「お待ちのお客様へ あと 3 組」「お待ちのあいだに」「少し離れてお待ちの方へ」

掲示の文面

掲示

文面

待ち組数

お待ちのお客様へ。あと 3 組でご案内です。目安は約 15 分です。変わったらお知らせします

待つ間に

メニューを先にどうぞ。ご注文もお受けします。本日のおすすめは〇〇です

離れて待つ方へ

少し離れてお待ちの方は、受付にひと声おかけください。2 組前までにお戻りください

声かけの例

場面

声かけ

受付のとき

「いま 3 組お待ちで、15 分ほどです。メニューを先にご覧ください」

待っている間

「あと 2 組でご案内です。ご注文がお決まりでしたら、先にうかがいます」

待ち時間が延びたとき

「お食事中のお客様が多く、あと 10 分ほどかかりそうです。お待たせしてすみません」

順番が前後するとき

「お二人様用のお席が空くまで、少々お待ちください。次にご案内します」

案内するとき

「お待たせしました。お待ちいただきありがとうございます」

案内するときの「お待ちいただきありがとうございます」は、待った時間を前向きに締めくくる大事なひと言です。スタッフ全員で同じ言葉を使えるよう、ピーク前のミーティングで確認しておくと安心です。

工夫の効果を確かめる

工夫を始めたら、効いているかを数字で確かめます。受付表の端に、次の 3 つを書き足すだけで十分です。

  1. 途中で帰った組数:受付したのに、呼んだときにいなかった組の数
  2. 受付から案内までの時間:受付した時刻と、案内した時刻
  3. 待ち時間についてのお客様のひと言:会計のときに聞いた感想や、口コミでの待ち時間への言及

工夫を始める前の 1〜2 週間と、始めた後の 1〜2 週間で比べます。待ち時間が同じくらいなのに途中で帰る組が減っていれば、待ち時間の感じ方が変わったと考えられます。

待ち時間の体験を仕組みにする

声かけと掲示は今日から始められますが、ピーク時に人手だけで続けるのは大変です。受付・順番の案内・呼び出しを仕組みにすると、スタッフの手が空き、お客様はより自由に待てるようになります。

人手での工夫

仕組みで代わりにできること

あと何組か、何分かを口頭で伝える

お客様がスマホで順番と待ち時間の目安を確認できる

店の前で名前を呼ぶ・電話をかける

順番が近づいたらスマホに通知する

メニューや紙の遊びを渡す

整理券の QR コードから、お店のゲームなどを開いてもらえる

順番待ちシステムの選び方は「順番待ちシステム比較」で詳しく解説しています。

アソベルでの待ち時間の過ごし方

アソベルは、受付・整理券の発行・呼び出しに加えて、待ち時間に遊べるお店オリジナルのゲームを配信できる順番待ちシステムです。お客様は整理券の QR コードを読み取るだけで、あと何組か・待ち時間の目安をスマホで確認でき、アプリを入れずにゲームを遊べます。

整理券の QR コードを読み取ると、スマホで「あと 1 組」の表示とともにクレーンゲームが遊べる様子

ゲームの素材には、お店の商品の写真とロゴを使います。待っている間に看板メニューを目にしてもらえるので、工夫 2 の「お店のことを知ってもらう」にもつながります。遊べるゲームは待ち時間ゲームの紹介、順番が近づいたときの通知などの機能は機能紹介、プランごとの違いは料金プランをご覧ください。

参考資料

まとめ

  • 待ち時間の感じ方は、長さだけでは決まらない。何もすることがない・先が分からない・理由が分からない・不公平に見える待ちは長く感じる
  • まずは「あと何組・あと何分」を伝え、延びたら理由と新しい目安をセットで伝える
  • メニューの先渡し、お店のこだわりの紹介、スマホで楽しめるものなど、待つ間に「すること」を渡す
  • 呼び出しの方法・離れてよいか・順番が前後する理由を先に伝え、不安と不公平をなくす
  • 座れる場所や暑さ寒さの備えに加え、店の前から離れて待てる形にすると、待ち時間はお客様自身の時間になる

待ち時間を楽しんでもらう仕組みを試したいお店は、アソベルの無料プランで受付とゲームづくりを試してみてください。

よくあるご質問

Q待ち時間を楽しんでもらう工夫は、何から始めればよいですか?
A

費用のかからない「先を見せる」ことから始めるのがおすすめです。受付のときに「いま 3 組お待ちで、15 分ほどです」と残りの組数と目安を伝え、メニューを先に渡すだけでも、待っている時間の感じ方は変わります。そのうえで、お店の紹介や遊べるものなど「待つ間にすること」を少しずつ増やしていきます。

Q子ども連れのお客様が待ち時間に退屈しないためには、どうすればよいですか?
A

座って待てる場所を優先して案内し、塗り絵やお子さま向けのメニュー表など、手元でできるものを渡すと過ごしやすくなります。店の前の列に並び続けるのが負担になりやすいので、受付だけ済ませて近くで待ってもらい、順番が近づいたら呼ぶ形にするのも有効です。

Qお店から離れて待ってもらうと、呼んでも戻ってこない方が出ませんか?
A

出ることがあるので、ルールを先に決めて伝えておきます。「2 組前までにお戻りください」「お呼びして 5 分お越しにならない場合は、次の方を先にご案内します」のように掲示し、受付のときにもひと言添えます。スマホへの通知で呼び出せる仕組みにすると、呼び出しの聞き逃しも減らせます。

この記事を書いた人

在間 理樹合同会社Y.G.Tクリエイト 代表

合同会社Y.G.Tクリエイト代表社員。飲食店向けの順番待ち整理券サービス「アソベル」の運営統括責任者。慶應義塾大学経済学部を卒業後、アビームコンサルティング株式会社で業務アプリケーション開発と業務運用改善プロジェクトのPMOに従事。2024年からゲーム開発を始め、16th Unity Awards、ニコ生自作ゲームフェス敢闘賞を受賞。業務改善とゲーム開発の経験をもとに、待ち時間を楽しめるお店の仕組みづくりに取り組んでいる。