待ち時間のクレーム対応|飲食店で使える場面別の対応と声かけ例

人気のお店ほど、待ち時間のクレームは避けられません。「後から来た人が先に入った」「呼ばれたのに順番を飛ばされた」といった不満は、対応を誤ると口コミにも残ります。
この記事は、飲食店の店主・店長に向けて、待ち時間のクレームへの対応を 場面別 にまとめました。結論からいうと、まず待たせたことにおわびし、事実を確かめ、理由と次の目安を示す のが基本です。そのまま使える声かけの例と掲示の見本、カスハラとの線引き、クレームを未然に防ぐ仕組みも紹介します。
待ち時間のクレームが起きる 4 つの原因
待ち時間のクレームは、待った長さだけで起きるわけではありません。サービス経営の研究者デービッド・マイスターは、待ちを長く感じさせる原則として「説明のない待ち」「不公平な待ち」「いつまでか分からない待ち」などを挙げています(David H. Maister「The Psychology of Waiting Lines」)。
飲食店の順番待ちに当てはめると、クレームの原因はおおむね次の 4 つです。
原因 | お客様の受け止め方 | よくある場面 |
|---|---|---|
不公平に見える | 「後から来た人が先に入った」 | 人数や席の種類で、案内の順番が前後した |
ルールが分からない | 「呼ばれていない」「聞いていない」 | 呼び出しに気づかず、不在の扱いになった |
案内と実際がずれる | 「15 分と言われたのに 40 分待った」 | 伝えた待ち時間の目安が外れた |
先が見えない | 「あと何組か分からない」 | 順番や待ち時間を知らせていない |
どれも、待ち時間そのものより 説明やルールが伝わっていないこと が火種になっています。だからこそ、場面ごとの説明の仕方を決めておけば、クレームの多くは防げます。
クレームを受けたときの基本の手順
場面にかかわらず、クレームを受けたら次の 4 つの手順で対応します。誰が受けても同じ順で動けるよう、スタッフで共有しておきます。

- 待たせたことをおわびする:店の誤りかどうかが分からない段階でも、「お待たせしてしまい、申し訳ありません」と待ってくださった気持ちにはおわびできます。言い分は途中で遮らずに最後まで聞きます
- 事実を確かめる:受付表や管理画面で、受付の番号・時刻・人数を確かめます。店の誤り(呼び忘れ・順番の飛ばし)なのか、ルールどおりの案内なのかを分けます
- できることを示す:店の誤りなら、すぐに次にご案内します。ルールどおりの案内なら、理由を説明し、「あと 2 組、10 分ほどでご案内できます」のように次の目安を伝えます
- 記録して共有する:営業のあとで、日時・場面・お客様の言い分・対応を記録し、スタッフで共有します。同じ場面が続くなら、ルールや掲示を見直します
謝罪の言葉は大切ですが、謝るだけで終わらせない のがポイントです。お客様が知りたいのは「いつ入れるのか」なので、次の目安までセットで伝えます。農林水産省の飲食店向けのガイドラインでも、料理が遅いという声に対して、謝るだけで状況を伝えない対応を NG とし、「あと●分ほどで出来あがりますが、いかがでしょうか?」と事情を伝えてお客様に選んでもらう対応を例に挙げています(農林水産省「飲食店のためのカスタマーハラスメント対策ガイドライン」)。
場面別の対応と声かけ例
順番待ちのクレームは、ほとんどが次の 4 つの場面で起きます。場面ごとに最初のひと言を決めておくと、ピークの時間でも落ち着いて対応できます。

順番が人数・席の種類で前後した
空いた 4 人席に、後から来た 4 人組を先に案内した。このとき、先に待っていた 2 人組からすると「抜かされた」と見えます。席の大きさと人数を合わせるのはお店として合理的な運用ですが、説明がないと不公平に見える のが問題です。
- 「お待たせしてすみません。いま空いたのが 4 名様用のお席で、お二人様用のお席が空き次第、次にご案内します」
- 「カウンター席でもよろしければ、先にご案内できます」
受付のときに「カウンター席でもよろしいですか」と席の希望を聞いておくと、案内できる席が増え、前後すること自体が減ります。
呼んだときにいなかった
呼び出したときにお客様がいなかったため、次の方を先に案内した。戻ってきたお客様から「順番を飛ばされた」と言われる場面です。ここで個別に例外を作ると、他のお客様から見て不公平になります。決めてあるルールどおりに対応する のが基本です。
- 「お戻りいただきありがとうございます。先ほどお呼びした際にいらっしゃらなかったため、次の方を先にご案内しました。次のお席が空き次第、ご案内します」
- 「受付の横にもご案内しておりますが、5 分お越しにならない場合は、次の方を先にご案内しています」
不在の方の順番を「次に回す」のか「最後に回す」のか、何分待つのかは、スタッフの間で決めておきます。呼び出しの声が届かない、トイレに行っていた、といった理由で不在になることもあるので、お客様を責める言い方は避けます。
列や待合に割り込まれた
受付をせずに列に並んだ方や、後から来て空いた席に座ろうとした方がいる。この場面は、お客様どうしで注意し合う形にしない ことが大切です。トラブルが大きくなるので、スタッフが間に入ります。
- 割り込んだ方へ:「恐れ入ります。こちらで受付をしてからのご案内になります。いま 3 組お待ちです」
- 先に待っていた方へ:「ご不便をおかけしました。順番どおりにご案内しますので、ご安心ください」
「代表の 1 人だけ並んで、あとから家族が合流する」「1 人で複数の組の順番を取る」といった場面も、割り込みに見えやすいものです。「全員おそろいになってからのご案内です」「順番の確保はお一人様につき 1 組までです」のように、店のルールを先に掲示しておきます。
伝えた待ち時間の目安が外れた
「15 分ほど」と伝えたのに、40 分たっても呼ばれない。食事中のお客様の滞在が長引くと、目安はどうしても外れます。問題は外れたことより、お客様が尋ねるまで店から何も伝えないこと です。
- 「お待たせしてすみません。お食事中のお客様が多く、あと 15 分ほどかかりそうです」
- 「お急ぎでしたら、受付を取り消していただいても大丈夫です。ご案内のめどが立ったら、改めてお声がけします」
目安が外れそうだと分かった時点で、店から先に伝えるのが一番の予防です。待っている方には、目安を伝え直すタイミングを決めておきます(例:最初の目安を 10 分過ぎたら、もう一度伝える)。
そのまま使える掲示の見本
クレームの多くは、ルールを 聞かれてから説明する と起きます。先に掲示しておけば、スタッフも「掲示のとおりです」と落ち着いて説明できます。

文面をコピーして使えるよう、文字でも載せておきます。分や組数は、お店に合わせて書き換えてください。
掲示 | 文面 |
|---|---|
ご案内の順番 | 受付の順にご案内します。お席の都合で、人数によりご案内の順番が前後する場合があります |
呼び出しに応じない場合 | お呼びして 5 分お越しにならない場合は、次の方を先にご案内します。お戻りの際は受付にお声がけください |
受付のお願い | 先に受付をお済ませください。全員おそろいになってからのご案内です |
順番の確保 | 順番の確保はお一人様につき 1 組までです |
掲示の文面は、待ち時間の目安や待合での過ごし方の見本と合わせて「飲食店の行列対策ガイド」にもまとめています。
正当なクレームとカスハラの線引き
待ち時間への不満の多くは、お店にとって改善のヒントになる正当な声です。一方で、要求の中身や伝え方が度を越えると、スタッフを守る対応が必要になります。
2026 年 10 月 1 日から、改正された労働施策総合推進法により、カスタマーハラスメント(カスハラ)からスタッフを守る対策が事業主の義務になりました。飲食店も、規模にかかわらず対象です(厚生労働省「令和7年労働施策総合推進法等の一部改正について」)。
カスハラにあたるのはどんなときか
厚生労働省のマニュアルは、カスハラを「顧客等の言動であって、業務の性質などに照らして社会通念上許容される範囲を超えたものにより、労働者の就業環境が害されるもの」と定めています。そのうえで、苦情のすべてがカスハラにあたるわけではなく、社会通念上許容される範囲の申し入れは正当なもの としています(厚生労働省「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」)。
待ち時間に当てはめると、次のように分けて考えられます。公的な資料が待ち時間の場面を例示しているわけではないので、店で判断するときの目安としてください。
正当なクレーム | カスハラにあたりうる言動 | |
|---|---|---|
要求の中身 | 順番の確認、待ち時間の説明、受付の取り消し | 順番を飛ばして先に入れる、理由のない値引きや無料の要求 |
伝え方 | 不満を伝える、説明を求める | 大声・暴言・威圧、スタッフの個人攻撃、土下座の要求 |
長さ・回数 | 説明を受けて終わる | 説明を尽くしても長時間続く、同じ要求をくり返す |
農林水産省のガイドラインは、飲食店でのカスハラの目安として、適切な対応を尽くしても 30 分以上続く 場合や、同じ内容が 3 回以上くり返される 場合を挙げています(あくまで目安とされています)。お店に非がある場合でも、店の対応方針を超えて続けばカスハラと判断するとしています(農林水産省「飲食店のためのカスタマーハラスメント対策ガイドライン」)。
店で決めておくこと
- 対応の打ち切りの基準:何分・何回で責任者に代わるか、どの言動で対応を打ち切るかを決めておく
- 責任者への交代:アルバイトのスタッフ 1 人に対応を続けさせない。「責任者に代わります」と伝えて交代する
- 記録:日時・言動・対応を記録する。厚生労働省のマニュアルも、初期対応として事実の確認と記録を挙げています
- 相談先:暴力や居座りなど身の危険があるときは、ためらわずに警察に通報する
東京都では 2025 年 4 月 1 日から「東京都カスタマー・ハラスメント防止条例」が施行されています(TOKYOはたらくネット「東京都カスタマー・ハラスメント防止条例」)。お店のある自治体の取り組みも確かめておきます。
大切なのは、正当な不満の声をすぐにカスハラと決めつけないことです。多くの待ち時間のクレームは、説明やルールの伝え方を見直すきっかけになります。
クレームを未然に防ぐ仕組み
ここまでの対応を毎回スタッフが口頭で行うのは、ピークの時間には大変です。クレームの原因である「先が見えない」「ルールが分からない」「不公平に見える」は、順番と呼び出しを見える形にすると減らせます。
クレームの原因 | 人手での対策 | 仕組みでできること |
|---|---|---|
先が見えない | あと何組か、何分かを口頭で伝える | お客様がスマホで順番と待ち時間の目安を確かめられる |
呼び出しに気づかない | 店の前で名前を呼ぶ | 順番が近づいたらスマホに通知する |
不公平に見える | 順番が前後する理由を口頭で説明する | 呼び出し中・お待ちの番号を店内のモニターに表示する |
受付の漏れ・割り込み | 受付表に記入してもらう | 店頭のタブレットで受付し、整理券を発行する |
待ち時間を短く感じてもらう工夫は「待ち時間を楽しませる工夫」、行列そのものを減らす方法は「飲食店の行列対策ガイド」、システムの選び方は「順番待ちシステム比較」で解説しています。
アソベルで順番を見える化する
アソベルは、受付・整理券の発行・呼び出しに加えて、待ち時間に遊べるお店オリジナルのゲームを配信できる順番待ちシステムです。店内のテレビやモニターに、呼び出し中の番号とお待ちの番号を大きく表示できます。

- 順番の表示:お待ちの番号と待ち組数、その日の案内ペースから計算した待ち時間の目安を表示できます
- 不在の扱い:呼んでもいらっしゃらない方は「不在」にしておき、戻られたら再呼び出しや待ち列への復帰ができます。ご不在の番号も画面に表示されます
- 呼び出しの通知:スタンダードプランでは、順番が近づいたお客様に、メール・プッシュ通知・LINE ミニアプリで順番をお知らせできます
機能の詳細は機能紹介、プランごとの違いは料金プランをご覧ください。待っている時間を楽しんでもらいたいお店は、待ち時間ゲームの紹介もあわせてご覧ください。
参考資料
- David H. Maister「The Psychology of Waiting Lines」
- 厚生労働省「令和7年労働施策総合推進法等の一部改正について」
- 厚生労働省「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」
- 農林水産省「飲食店のためのカスタマーハラスメント対策ガイドライン」
- TOKYOはたらくネット「東京都カスタマー・ハラスメント防止条例」
まとめ
- 待ち時間のクレームは「不公平に見える」「ルールが分からない」「案内と実際がずれる」「先が見えない」の 4 つから起きる
- 受けたら、待たせたことにおわびする → 事実を確かめる → 理由と次の目安を示す → 記録して共有する、の順で対応する
- 順番が前後した・不在・割り込み・目安が外れた、の場面ごとに最初のひと言を決め、ルールを先に掲示しておく
- 大声や過度な要求など、手段や態度が度を越える場合はカスハラとして、責任者が代わり、対応を打ち切る基準を決めておく
- 順番と呼び出しを見える形にすると、クレームの原因そのものを減らせる
アソベルは無料プランから試せます。店頭のタブレットでの受付と、呼び出し・順番の管理を、まずは自店のピークの時間に使ってみてください。
よくあるご質問
Q待ち時間のクレームで、最初に何と言えばよいですか?
まず「お待たせしてしまい、申し訳ありません」と、待たせたことにおわびします。店の誤りかどうかが分からない段階でも、待ってくださった気持ちにはおわびできます。そのうえで受付の番号や時刻を確かめ、理由と次にご案内できる目安を伝えます。
Q呼んだときにいなかったお客様から「順番を飛ばされた」と言われたら、どうすればよいですか?
決めてあるルールどおりに対応し、次にご案内できる目安を伝えます。「お呼びして 5 分お越しにならない場合は、次の方を先にご案内します」のように、不在の扱いを受付の横に掲示し、受付のときにもひと言伝えておくと、説明しやすくなります。不在の方の順番を次に回すのか、最後に回すのかも、スタッフの間で決めておきます。
Q大声を出したり、土下座を求めたりするお客様にも、謝り続けるべきですか?
いいえ。待ち時間への不満そのものは正当な声でも、大声や威圧、過度な要求のように手段や態度が社会通念上許される範囲を超える言動は、カスタマーハラスメントにあたることがあります。1 人で対応を続けず、責任者に代わり、対応を打ち切る基準をあらかじめ店で決めておきます。
この記事を書いた人
在間 理樹合同会社Y.G.Tクリエイト 代表
合同会社Y.G.Tクリエイト代表社員。飲食店向けの順番待ち整理券サービス「アソベル」の運営統括責任者。慶應義塾大学経済学部を卒業後、アビームコンサルティング株式会社で業務アプリケーション開発と業務運用改善プロジェクトのPMOに従事。2024年からゲーム開発を始め、16th Unity Awards、ニコ生自作ゲームフェス敢闘賞を受賞。業務改善とゲーム開発の経験をもとに、待ち時間を楽しめるお店の仕組みづくりに取り組んでいる。

