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飲食店の多言語受付ガイド|来店から案内までのインバウンド対策

公開日 情報更新日 著者 在間 理樹

外国人のお客様への対応というと、メニューの多言語化が思い浮かびます。けれども、お客様が最初に困るのは、メニューを開く前の 入口の受付 です。受付の場所が分からない、受付表に名前を書けない、呼び出しが聞き取れない、といったことが起きます。

この記事は、外国人のお客様が増えてきた飲食店の店主・店長に向けて、来店してから席に着くまでの受付・順番待ち・呼び出しを多言語にする方法 をまとめました。結論からいうと、入口に多言語の掲示を貼り、名前ではなく番号で受け付け、外国人のお客様が多い店は受付の画面ごと多言語にする の順で進めるのが近道です。

順番待ちの対策の全体像は、飲食店の行列・順番待ち対策の完全ガイドで紹介しています。

外国人のお客様が受付でつまずく 4 つの場面

JNTO(日本政府観光局)によると、2025 年の訪日外客数は 4,268 万 3,600 人(推計値)でした(JNTO「訪日外客数(2025年12月推計値)」)。観光地や繁華街だけでなく、地域の飲食店にも外国人のお客様が来るようになっています。

観光庁の調査では、旅行中に困ったこととして「施設等のスタッフとのコミュニケーション(英語が通じない等)」を挙げた人が 15.4% いました。困った場所として最も多かったのは飲食店で 38%、困ったときに「コミュニケーションを諦めた」人も 31% いました(観光庁「令和7年度 訪日外国人旅行者の受入環境整備に関するアンケート 調査結果」)。

受付での困りごとは、来店してから席に着くまでの次の 4 つの場面で起きやすくなります。

外国人のお客様が受付でつまずく 4 つの場面の表。入口の案内・名前と人数の受付・待ち時間の目安・呼び出しについて、起きやすいこととお店ができることを並べている
  • 入口の案内:受付の場所や、順番待ちがあることが分からず、そのまま店内に入ってくる
  • 名前・人数の受付:紙の受付表に名前を書けない、何名かを伝えられない
  • 待ち時間の目安:どのくらい待つのか分からず、あきらめて帰ってしまう
  • 呼び出し:日本語の名前の呼び出しが聞き取れず、順番を逃してしまう

どの場面も、伝える内容はほぼ決まっています。「受付はこちら」「何名様ですか」「待ち時間は約 30 分です」「番号でお呼びします」の 4 つが伝われば、受付はほとんど回ります。決まった内容を、言葉ではなく掲示・番号・画面で伝える のが、多言語の受付の考え方です。

多言語にする言語の選び方

飲食店の多言語対応では、英語・中国語・韓国語がよく挙げられます。中国語は、簡体字と繁体字の 2 種類 があることに注意します。

観光庁の中国語のマニュアルは、簡体字は中国大陸・マレーシア・シンガポールなど、繁体字は香港・マカオ・台湾などで使われるとしています。日常で使わない字体は読めないことが多いため、両方を整備することが望ましいとも書いています(観光庁「地域観光資源の中国語解説文作成のためのライティング・スタイルマニュアル(追補版)」)。

そのため、掲示や受付の画面は、次の 4 言語(日本語を入れて 5 つ)をそろえるのが基本です。

言語

主に読む方

英語

欧米・東南アジアなど、多くの国・地域の方

中国語(簡体字)

中国大陸・マレーシア・シンガポールなどの方

中国語(繁体字)

台湾・香港・マカオなどの方

韓国語

韓国の方

どの国・地域の方が多く来るかは、店の場所や季節で変わります。まずは 1〜2 週間、受付で外国人のお客様の言語を数えてみて、多い言語から整えていきます。タイ語やベトナム語など 4 言語以外のお客様が多い店は、その言語の掲示も足します。

場面ごとの対策

4 つの場面ごとに、具体的な打ち手を紹介します。どれも、スタッフが外国語を話せなくてもできるものです。

入口の案内:受付の場所を多言語で示す

入口の外から見える位置に、「受付はこちら」「順番待ちがあります」を多言語で掲示します。受付の機械や受付表を置いている場合は、そのすぐ上にも貼ります。

「受付」の訳は、公的な対訳表にならうと迷いません。東京都の案内サインの対訳表では、受付を英語「Reception」、中国語(簡体字)「接待处」、中国語(繁体字)「櫃台」、韓国語「접수」としています(東京都「国内外旅行者のためのわかりやすい案内サイン標準化指針 東京都版対訳表」)。

入口の掲示は、文字を大きく、1 枚に 1 つの内容にします。矢印やピクトグラムを添えると、どの言語の方にも伝わりやすくなります。

名前・人数の受付:名前ではなく番号で受ける

紙の受付表に名前を書いてもらう方式は、外国人のお客様にとって最もつまずきやすい場面です。名前の書き方が分からない、スタッフが名前を読めない、呼び出しで発音が通じない、と困りごとが続きます。

そこで、名前ではなく番号で受け付けます。番号札や整理券を渡し、受付表には番号と人数だけを書いておけば、言葉が通じなくても順番を管理できます。人数は、指で示してもらうか、指さしシートの数字を指してもらいます。

秋田県の指差しツール(レストラン)には、「いらっしゃいませ。何名様ですか?」「ただいま満席です。」「待ち時間は○○ほどです。」などが、英語・中国語(簡体字・繁体字)・韓国語で載っています(秋田県「指差しツール(レストラン)」)。印刷して受付に置いておくと、その場で指さして伝えられます。

受付でよく使うひと言を、秋田県の指差しツールの文面から抜き出しました。指さしシートを作るときの見本にしてください。

日本語

英語

中国語(簡体字)

中国語(繁体字)

韓国語

いらっしゃいませ。何名様ですか?

Hello. How many in your party?

欢迎光临。请问您几位?

歡迎光臨。請問您幾位?

어서오세요. 몇 분이십니까?

ただいま満席です。

I'm afraid no tables are available at the moment.

现在没有空位。

現在沒有空位。

현재, 만석입니다.

お好きな席へどうぞ。

Please take any available table.

请选择您喜欢的座位。

請選擇您喜歡的座位。

원하시는 자리에 앉으세요.

翻訳アプリや通訳機器も助けになります。観光庁の同じ調査では、スタッフとのコミュニケーションで便利だった理由として、「通訳機器・タブレット・指さし会話シートなどを利用できた」を挙げた人が 51% いました。ただ、受付のたびにアプリで話すと 1 組ごとに時間がかかるので、決まった内容は掲示と指さしで、決まっていない質問だけアプリで と分けると、受付が止まりにくくなります。

待ち時間の目安:数字で見せる

「どのくらい待つのか」が分からないことは、外国人のお客様に限らず、待つ人の不満の大きな原因です。言葉で説明するより、「あと 5 組」「約 30 分」と数字で見せる ほうが、どの言語の方にも伝わります。

受付の横に、待ち時間の目安を書き換えられる掲示を置きます。整理券に受付の時刻と番号を書いておくと、お客様が自分で目安を考えられます。待ち時間への不満の受け止め方は、待ち時間のクレーム対応で詳しく紹介しています。

呼び出し:番号を表示し、スマホに知らせる

日本語で名前を呼ぶ方式は、外国人のお客様には聞き取りにくく、順番を逃す原因になります。呼び出しは番号で行い、番号を目で見える形にします。

  • 呼び出す番号を、受付の横のホワイトボードや店内のモニターに書き出す
  • 番号を呼ぶときは、日本語に加えて英語の数字でも呼ぶ
  • 店を離れて待つお客様には、スマホに呼び出しを届ける

番号の表示は、文字を読まなくても分かるので、言語を問いません。

店内のモニターに、呼び出し中の番号 1 と、お待ちの番号 3・4・5、待ち 4 組・目安 約 40 分が大きく表示されたアソベルの画面

スマホへの呼び出しの方法(LINE・メール・プッシュ通知など)の違いは、飲食店の LINE 呼び出しで紹介しています。

そのまま使える 4 言語の掲示の見本

入口と受付に貼る掲示の見本です。上から英語・中国語(簡体字)・中国語(繁体字)・韓国語の順に並べています。待ち時間は、お店に合わせて書き換えてください。

入口と受付に貼る 4 言語の掲示の見本 3 枚。受付はこちら、番号でお呼びします、待ち時間 約 30 分を、英語・中国語(簡体字・繁体字)・韓国語で書いている

コピーして使えるように、文面を表にしておきます。

日本語

英語

中国語(簡体字)

中国語(繁体字)

韓国語

受付はこちら

Please check in here

请在这里登记

請在這裡登記

여기에서 접수해 주세요

番号でお呼びします

We will call your number

我们会按号码叫号

我們會依號碼叫號

번호로 불러 드립니다

待ち時間は約 30 分です

It will take about 30 minutes

等待时间为30分钟左右

等待時間為30分鐘左右

대기 시간은 약 30분입니다

順番が来たらお呼びします。近くでお待ちください

We will call you when it's your turn. Please wait nearby.

轮到您时我们会叫您,请在附近等候。

輪到您時我們會叫您,請在附近等候。

순서가 되면 불러 드리겠습니다. 근처에서 기다려 주세요.

待ち時間の文面は、秋田県の指差しツール(レストラン)の表現にそろえています。掲示する前に、できればその言語を母語とする方に読んでもらい、不自然な表現がないかを確かめてください。

お金をかけずにできること・仕組みにすること

多言語の受付は、一度にすべてを整える必要はありません。費用をかけずに今日から始められることと、外国人のお客様が増えたら仕組みにすることを、3 つの段階に分けて考えます。

多言語の受付を進める 3 つの段階。01 掲示と指さしで伝える、02 名前ではなく番号で受ける、03 受付の画面ごと多言語に
  1. 掲示と指さしで伝える(今日から・費用ほぼ 0 円):入口と受付に 4 言語の掲示を貼り、指さしシートを置く
  2. 名前ではなく番号で受ける:番号札・整理券を渡し、番号で呼び、番号を見せる
  3. 受付の画面ごと多言語にする:お客様が自分で言語を選んで受付し、順番をスマホで確かめられるようにする

1 と 2 だけでも、受付で言葉に頼る場面はかなり減ります。ただ、入口で 1 組ずつ説明する手間は残ります。外国人のお客様が毎日のように来る店や、ピークに行列ができる店は、3 まで進めると、受付の手間ごと減らせます。

大阪市の好事例集には、ピーク時に平均 8〜10 組の待ちがあった焼肉店の例が載っています。導入前は、受付専任のスタッフが英語・韓国語・中国語の指差しシートで待ち時間を説明し、1 組に 5 分程度かかっていました。お客様がタブレットで言語を選んで人数を入力する受付に変えたあとは、受付専任のスタッフが不要になったとしています(大阪市「外国人観光客受入環境高度化事業 好事例集(飲食店等におけるインバウンド対応)」)。

掲示や指さしで伝えきれないこと(食材の質問、トラブルの対応など)は、自治体の通訳サービスを使える場合があります。たとえば東京都は、都内の宿泊・飲食・小売の事業者に向けて、電話での通訳・翻訳を行う多言語コールセンターの利用事業者を募集しています(東京都「令和8年度 多言語コールセンター 利用事業者を募集します」)。お店の地域の自治体や観光協会の支援も確かめてみてください。

多言語の受付システムで確かめる 6 つのこと

受付の画面ごと多言語にするときは、順番待ちシステム(受付システム)を使います。選ぶときは、お客様の流れ(受付 → 待つ → 呼び出し)と、お店の運用に分けて、次の 6 つを確かめます。

多言語の受付システムで確かめる 6 つのこと。受付の画面で選べる言語、言語の切り替えやすさ、待っている間の画面の言語、呼び出しの方法、店独自の質問の訳、費用と使う機器
  • 受付の画面で選べる言語:お客様の多い国・地域の言語があるか。中国語は簡体字と繁体字の両方があるか
  • 言語の切り替えやすさ:お客様がその場で、迷わず自分の言語を選べるか
  • 待っている間の画面の言語:整理券からスマホで見る順番の画面も、同じ言語で表示されるか
  • 呼び出しの方法:番号の表示や、スマホへの通知があるか
  • 店独自の質問の訳:「カウンター席でもよいか」など、店が足した質問も各言語で出せるか
  • 費用と使う機器:月額の費用と、手持ちのタブレットで始められるか

順番待ちシステムの選び方と主なサービスの違いは、順番待ちシステムの比較で詳しく紹介しています。

アソベルは、店頭のタブレットで受付と整理券の発行ができる順番待ちシステムです。お客様が受付する画面は、日本語・英語・中国語(簡体字・繁体字)・韓国語の 5 言語に対応し、お客様がワンタップで切り替えられます。整理券の QR コードから開く、お客様のスマホの順番待ちページも同じ 5 言語です。お店が独自に足した受付時の質問も、訳文を登録すればお客様の言語で表示できます。

アソベルの受付画面を英語・中国語(簡体字)・韓国語・中国語(繁体字)に切り替え、受付番号 8、前に 5 組、待ち時間の目安 約 50 分が表示された画面

5 言語の受付画面と、店内のモニターでの番号表示は、無料プランから使えます。スタンダードプランでは、順番が近づいたときと呼び出しのときに、メール・プッシュ通知(Android のスマホ)・LINE でお知らせできます。機能の詳細はアソベル「機能紹介」、プランごとの機能と料金は「料金プラン」をご覧ください。

参考資料

まとめ

  • 外国人のお客様は、メニューの前に、入口の案内・名前と人数の受付・待ち時間の目安・呼び出しの 4 つの場面でつまずきやすい
  • 言語は英語・中国語(簡体字・繁体字)・韓国語の 4 つが基本。実際に来るお客様の言語を数えて優先順位を決める
  • 決まった内容は、言葉ではなく掲示・番号・画面で伝える。名前ではなく番号で受け付け、番号で呼び出す
  • 費用をかけずに掲示と指さしから始め、外国人のお客様が増えたら受付の画面ごと多言語にする
  • 受付システムは、選べる言語・待っている間の画面の言語・呼び出しの方法・費用を確かめて選ぶ

アソベルは無料プランから試せます。5 言語の受付画面と整理券の発行、店内のモニターでの番号表示を、まずは外国人のお客様が多い時間に使ってみてください。

よくあるご質問

Q飲食店の受付は、何語に対応すればよいですか?
A

まずは英語に加えて、中国語(簡体字・繁体字)と韓国語の 4 言語を考えるのが一般的です。ただし、来店するお客様の国・地域は店の場所によって違います。実際に来ているお客様の言語を数えてから、優先する言語を決めてください。

Qスタッフが英語を話せなくても、多言語の受付はできますか?
A

できます。受付で伝えることは「何名様か」「待ち時間の目安」「順番が来たら呼ぶこと」とほぼ決まっているので、多言語の掲示と指さしシートで多くを伝えられます。名前ではなく番号で受け付け、番号で呼び出すと、言葉に頼る場面がさらに減ります。

Q中国語は、簡体字と繁体字の両方が必要ですか?
A

観光庁の中国語のマニュアルは、簡体字は中国大陸など、繁体字は香港・マカオ・台湾などで使われ、日常で使わない字体は読めないことが多いため、両方を整備することが望ましいとしています。掲示の見本は両方を並べておくと安心です。

この記事を書いた人

在間 理樹合同会社Y.G.Tクリエイト 代表

合同会社Y.G.Tクリエイト代表社員。飲食店向けの順番待ち整理券サービス「アソベル」の運営統括責任者。慶應義塾大学経済学部を卒業後、アビームコンサルティング株式会社で業務アプリケーション開発と業務運用改善プロジェクトのPMOに従事。2024年からゲーム開発を始め、16th Unity Awards、ニコ生自作ゲームフェス敢闘賞を受賞。業務改善とゲーム開発の経験をもとに、待ち時間を楽しめるお店の仕組みづくりに取り組んでいる。